栗の木エッセー作品6
2008年12月04日
本年春に創業二百年を記念して募集しました「栗の木エッセー賞」のご応募総数830編のうち、計13作品を連載でご紹介いたします。
独自に持つ「お菓子」への思いがたくさん詰まっています。
どうぞご覧下さい。
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ブランデーケーキのラブレター
石川県 紫藤幹子 様
無塩バターにグラニュー糖と転化糖を加え、ハンドミキサーでよくかきまぜる。このときは強く、空気をたくさんいれるように。
バターが白っぽくなったら全卵を入れて軽く湯せんにかけてからまたハンドミキサーで十分間かきまぜる。ここは生地の具合をみながら少し優しく。
生地がもったりしてきたらミキサーの速度を緩めて薄力粉を少しずつ加えながらさらに優しくかきまぜる。
粉っぽさがなくなったら卵黄とブランデーをいれて全体的に軽くかきまぜ、型に流してオーブンへ。
どきどきしながら焼きあがるのを待つ間、次のケーキの準備をする。やがてオーブンから甘い香りが部屋いっぱいに漂い始める。
焼きあがったケーキに転化糖を加えたブランデーを手早く塗って、ブランデーケーキの出来上がり。
町の中の小さなこの作業所では車椅子の美女が三人、毎日ケーキを焼いている。
ブランデーケーキやマドレーヌ、シフォンケーキ。
どんな人が食べてくれるんだろう。その人がほんの少し幸せな気分になってくれたらいいな。そんなことを考えながら。
時々「おいしかったよ」という返事が届く。お店からの注文が来る。
美女たちは微笑み、さらにはりきってケーキを焼く。
まるで大切な人に手紙を書くように。いま自分にできる精いっぱいの愛をこめて。
バターと卵が分離したり生地がうまく膨らまなかったり、たまに失敗もするけれど、そんな失敗も楽しみながら、美女たちは今日もケーキを焼く。


