栗の木通信

最優秀作品発表

2008年08月09日

[栗の木エッセー賞]

春に募集いたしました、「栗の木エッセー賞」の最優秀作品を掲載します。
非常に心が温まるエピソードです。
どうぞご覧下さい。

最優秀作品 「私の夢」   

岩手県盛岡市  畠山繭香 様


私とお菓子との思い出は沢山ありますが、中でもお気に入りの出来事は、母と幼い頃から通っていた「ケーキ屋さん」のエピソードです。
私の実家の近くにはケーキ屋さんが三軒あります。誕生日のお祝いやちょっとしたパーティ、甘い物が食べたい時、母が必ず行くケーキ屋さんがあります。母の行く三軒の中の一軒は、他の二軒に比べて少し古くて幼い頃の私には何だかパッとしないイメージがありました。けれども味はとってもよくて、甘さひかえめ。私や母好みのケーキばかりです。
私が十七歳になったある日。私は急に甘い物が欲しくなり、母に
「ケーキ買って帰ろ!」
と言い出しました。近くにケーキ屋さんは沢山あったのに、わざわざ遠回りしてまで行きつけのケーキ屋さんに車を走らせた母。私は母に聞きました。
「何でそんなにここのケーキ屋さんにこだわるの?」
母はこの日初めてその理由を私に聞かせてくれました。
「このケーキ屋さん、父さんが母さんと結婚して初めて連れてきてくれたケーキ屋さんなんだ。『ここ美味しいんだよ!』って。」
そう話す母の照れた顔を見たとき私は何だかすごく幸せな気分になりました。そんな母の話を聞くのは初めてだったと思うし、私がその幸せな気持ちを理解できる年頃になったから母は私に話してくれたんだと感じて、すごく嬉しく思いました。
そして十九歳になった現在、私はパティシエを目指して製菓学校でお菓子作りに没頭しています。この学校を卒業して沢山の修行を積み、いつか、誰かの思い出の一ページに登場できるようなケーキ屋さんになりたいです。
母が出会った一軒のケーキ屋さんのように。

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